VPN接続中に通信速度が落ちる原因は一つではありません。 回線環境・サーバーの負荷・プロトコルの選択など、複数の要因が複雑に絡み合っているため、「なぜ遅いのか」を正確に把握しないまま対処しても改善は見込めません。 この記事では、VPN LIFE編集チームが実際の検証結果をもとに、速度低下を引き起こす根本的な原因とその具体的な解決策を体系的に整理しました。 心当たりのある原因から順に試してみることで、多くのケースで速度改善が期待できます。 この記事の数字について 調べているVPN 7社 サーバーのある場所 157の国と地域を、毎日数え直しています 通信速度 14都市で、実機を使って自分たちで計測しています 各社の発表をそのまま書き写したものではありません。サーバーの台数と拠点の数は、各社が公開している一覧をそのまま数えたものです。実測が済んでいない項目には推定値を入れず「計測中」と書いています。取り方はデータの取り方と検証方法にまとめています。 他の言語で読む English / 中文 / Bahasa Indonesia / 한국어 / ไทย / Tiếng Việt VPN接続で通信速度が低下する7つの原因 VPN使用時の速度低下には、大きく分けて「回線側の問題」「サーバー側の問題」「設定側の問題」の3つの切り口があります。 以下では、それぞれの原因を一つひとつ丁寧に解説します。 ①ベースとなる回線速度そのものが不足している VPN接続の通信速度は、あくまでも元のインターネット回線のスループットを上限として動作します。 つまり、VPNを使う前の段階で速度が出ていなければ、どれほど高性能なVPNサービスを契約していても意味がありません。 まず確認すべきは「VPNなしの状態での実測値」です。 スピードテストツールを使えば数秒で計測できます。 一般的な用途別の速度目安は以下のとおりです。 用途別の推奨回線速度 用途別の推奨回線速度 メール・テキスト通信:1Mbps程度 一般的なWebサイト・標準画質動画:10Mbps程度 高画質(HD/4K)動画の視聴:30Mbps以上 出典:Wi-Fi速度の目安(各種通信速度基準より) これらの数値を下回っているなら、VPN以前にインターネット回線自体の見直しが先決です。 ②接続先のVPNサーバーが物理的に遠い VPNの仕組み上、通信データは一度VPNサーバーを経由してから目的地に届きます。 この経由地が遠ければ遠いほど、データの往復距離が延びて遅延(レイテンシ)が増加します。 たとえば、日本から韓国のサーバーを経由する場合と、イギリスのサーバーを経由する場合では、後者のほうがデータの移動距離が大幅に長くなります。 VPN LIFE編集チームの計測では、元回線が40Mbps程度あっても、ヨーロッパのサーバーに接続すると実測値が20Mbps前後まで半減するケースが珍しくありませんでした。 物理的な距離は速度に直結する要因であるため、接続先サーバーの選択は慎重に行う必要があります。 ③VPNサーバー自体のスペックや品質に問題がある 距離の問題がなくても、接続先サーバーの処理能力が低ければ速度は出ません。 VPN通信では暗号化・復号といった高負荷な演算処理が常時発生しており、サーバー側のハードウェア性能がそれに追いついていない場合、通信全体が詰まってしまいます。 無料VPNや格安VPNでこの問題が起きやすいのは、サーバーインフラへの投資が少ないためです。 速度を重視するなら、サーバー品質に定評のある有料サービスを選ぶことが基本です。 ④同一サーバーへのアクセスが集中している サーバーが高性能であっても、同時接続ユーザー数が多すぎると帯域が分散して一人あたりの速度が落ちます。 これはちょうど、高速道路での渋滞と同じ現象です。特定の国・都市のサーバーに人気が集中する時間帯には、通常より明らかに速度が落ちることがあります。 ⑤セキュリティソフトがVPN通信に干渉している ウイルス対策ソフトやファイアウォールは、通過するデータをリアルタイムでスキャンしています。 VPN経由の暗号化トラフィックに対しても同様の処理が走るため、これがボトルネックとなって通信速度に悪影響を与えることがあります。 セキュリティソフトが原因かどうかを確認するには、一時的に無効化した状態で速度を計測し、有効時と比較するのが最も確実な方法です。 ⑥速度面で不利なVPNプロトコルを使っている VPN通信の方式(プロトコル)は複数存在しており、その選択によって速度とセキュリティのバランスが大きく変わります。 主なプロトコルとその特徴は次のとおりです。 主なVPNプロトコルの比較 WireGuard:軽量設計で最速クラス。近年急速に普及している次世代プロトコル IKEv2:速度と安定性のバランスが良く、モバイル環境に強い OpenVPN(UDP):汎用性が高く、UDPモードなら比較的高速 OpenVPN(TCP):信頼性重視のため速度はやや落ちる傾向 IPSec:安定性は高いが、速度面では上記に劣ることが多い 速度を優先したい場面ではWireGuardベースのプロトコル(NordVPNならNordLynx、ExpressVPNならLightway)を選ぶのがセオリーです。 ⑦MTU値の設定が通信環境と合っていない MTU(Maximum Transmission Unit)とは、ネットワーク上で一度に送信できるデータパケットの最大サイズを指します。 この値がVPN環境に対して大きすぎると、データが細かく分割されて送受信されるようになり、処理の効率が落ちて速度低下につながります。 特にVPN接続はオーバーヘッド(暗号化処理などによる追加データ)が発生するため、通常の回線よりも最適なMTU値が小さくなることが多いです。 VPN接続の通信速度を改善する7つの方法 原因が把握できたら、次は対策です。 効果の出やすいものから順に試していくことをおすすめします。 ①ベース回線の速度を底上げする VPN側でどれだけ最適化を図っても、元回線が遅ければ上限を超えることはできません。 通信が混雑しやすい夜間や週末を避けてVPNを使うか、現在のISP(インターネットサービスプロバイダ)から光回線など高速なサービスへの乗り換えを検討しましょう。 Wi-Fi利用中であれば、ルーターとの距離を縮めるか有線LAN接続に切り替えるだけで、大幅に改善するケースもあります。 ②現在地から近いサーバーを優先して選ぶ 特定の国のコンテンツにアクセスしたい場合でも、目的の国と同じコンテンツが視聴できる最近隣のサーバーを選ぶと速度面で有利です。 たとえば、日本から韓国向けコンテンツにアクセスする際は、韓国の中でもソウルや釜山など日本に近い都市のサーバーを選ぶと差が出ます。 また、海外コンテンツへのアクセスを目的とせず単純に匿名性やセキュリティのためにVPNを使っているなら、日本国内のサーバーを選ぶのが速度面で最善です。 ③同じ国・地域の別サーバーに切り替える 多くのVPNサービスは、同一国内に複数のサーバーを設置しています。 現在接続しているサーバーが混雑していると感じたら、同じ国の別都市・別サーバーに切り替えることで改善する場合があります。 接続先を変える手順は以下が代表的です。 サーバー変更の主な方法 一度切断して再接続し、別のサーバーに自動割り当てさせる 同じ国内で別の都市を手動で選択する 負荷状況を表示できるVPNアプリで、混雑の少ないサーバーを指定する ④セキュリティソフトを一時的に無効化して速度を確認する ウイルス対策ソフトを一時停止した状態でVPN接続の速度を計測し、有効時と比較してみましょう。 明らかに速度が改善するなら、セキュリティソフトの設定でVPN関連のプロセスやポートをスキャン対象から除外することで、無効化せずに速度を確保できる場合があります。 ただし、セキュリティソフトを長時間オフにしたままにすることはリスクが伴うため、あくまで原因の切り分け目的に限定して行うのが賢明です。 ⑤より高速なVPNプロトコルに切り替える 現在使っているプロトコルが速度面で不利な設定になっているなら、変更することで劇的に改善するケースがあります。 一般的には、TCPよりUDPのほうが確認応答の処理が少ない分だけ高速です。 ...