
VPNはつながっているのに、目当てのサイトだけが開かない。ここでつまずいた経験のある方は多いはずです。
つい回線を疑いたくなりますが、たいていの場合、通信そのものは正常に動いています。止めているのは相手側のサービスです。
原因の見当が外れたまま設定をいじり続けると、時間だけが溶けていきます。
この記事では、なぜ弾かれるのかを3つに切り分けたうえで、実際に効く手を順番に並べていきます。
そもそも、なぜVPNを使うとブロックされるのか
インターネット全体はつながっているのに、特定のサービスだけが開かない。この状態には、はっきりした理由が3つあります。
どれに当たっているかで、打つ手が変わります。
VPNサーバーのIPが検知・遮断されている
VPNを通すと、自分の回線が持つ番号ではなく、VPNサーバーの番号でサイトにアクセスすることになります。
かつてこの仕組みを使って不正な購入や地域限定コンテンツへの無断アクセスをする利用者が増えたため、Netflixをはじめとする配信やECのサービスは、VPN経由の番号を積極的に遮断する体制を整えてきました。
見分け方として代表的なのが、「同じ番号から短時間に大量のアクセスが集まる」という偏りの検出です。
VPNのサーバーは複数の利用者で共有されるため、1つの番号に数十件から数百件のアクセスが同時に発生します。
この動きが引っかかると、その番号は遮断の一覧に載ります。
一度載ってしまうと、同じサーバーを使い続けている限り通りません。ここが「昨日は見られたのに今日は開かない」の正体です。
短時間で複数国からのアクセスと判定されている
VPNの便利さは、サーバーを選び直すだけで接続国を変えられるところにあります。
ただし、その手軽さが別の問題を呼びます。
日本でログインしていたアカウントに、その数分後にドイツのサーバー経由でアクセスしたとします。
相手側の仕組みは「人間が移動できない速さで場所が変わった」と判断し、不正なアクセスと見なすことがあります。
アカウントの乗っ取りが、まさにこの形で起きるためです。
結果として、ログインがその場で止められたり、アカウントが一時的に凍結されたりします。
銀行・証券・クレジットカードといったお金を扱うサービスほど、この判定は厳しくなります。
接続先のサーバーが地域制限の対象になっている
配信の権利は、国ごとに別々の契約で成り立っています。
日本向けのサービスが国外から開けない、逆に特定の国でしか使えないサービスが日本から開けない。どちらも、この権利の切り分けから来ています。
VPNはその地域制限を越えるために使われますが、向きを間違えると自分が弾かれる側に回ります。
日本のサービスに海外のサーバーからつなごうとすれば、当然そこで止まります。
フリマアプリ、ネットバンキング、行政のサービスなど、国内での利用を前提にしたものの多くは、海外の番号からのアクセスを一律で遮断しています。
VPNを使いながら日本のサービスを開きたいのであれば、つなぐ先は日本国内のサーバーにしてください。
アクセスを回復させるための具体的な対処法
原因が3つに絞れたので、手も絞れます。効く順に並べます。
まず試すべきこと:サーバーを切り替える
有料のVPNを使っていても、サーバー1台ごとに遮断されていることはあります。
その場合、サービスそのものを乗り換える前に、同じサービスの中で別のサーバーに移すだけで通ります。ほとんどはこれで片が付きます。
ここで効いてくるのが、同じ国の中にいくつ場所を持っているかです。1か所しか公開していない会社だと、その1台が遮断された時点で逃げ場がありません。
当サイトは各社の公式サーバー一覧を毎日取り直しています。日本国内について、選べる都市の数は次のとおりでした(2026年9月4日時点)。
|
VPN |
日本国内で選べる都市の数 |
別のサーバーへ逃がせるか |
|---|---|---|
|
ExpressVPN |
4都市 |
できる |
|
NordVPN |
2都市 |
できる |
|
Mullvad VPN |
2都市 |
できる |
|
Private Internet Access |
2都市 |
できる |
|
Surfshark |
1都市 |
できない(1か所のみ) |
|
Windscribe |
1都市 |
できない(1か所のみ) |
|
CyberGhost VPN |
1都市 |
できない(1か所のみ) |
※各社が公開しているサーバー一覧を当サイトが2026年9月4日に取得して数えたものです。
日本国内で複数の場所を選べるのは、追いかけている7社のうち4社です。
つまり残る3社では、この「まず試すべきこと」がそもそも実行できません。契約する前に、ここを見ておいてください。
なお、アメリカのように場所の多い国では話が変わります。同じ7社でも、アメリカではExpressVPNが56都市、NordVPNと Private Internet Access が55都市と、逃がし先は桁違いに多くなります。
「サーバーが多い会社」ではなく「自分が使う国に場所が多い会社」で見るのが正しい読み方です。
つないだあとに国が切り替わっているかどうかは、当サイトのIPアドレス確認ツールでその場で確かめられます。ここが目的の国になっていなければ、原因はサービス側ではなくVPNの接続のほうです。
無料VPNには限界がある
無料のVPNは「つながる」という意味では確かに使えます。
会社を見分ける材料になるのは、第三者による監査を受けて結果を公開しているかどうかです。当サイトが調べている7社のうち、監査を公表しているのは5社。ただし対象は同じではありません。通信記録を残さないという方針そのものを対象にした監査を受けているのは3社(NordVPN・Surfshark・Private Internet Access。いずれもDeloitte)で、Mullvadはアプリ・インフラ・決済を個別に、Windscribeはサーバーの設備とアプリを対象にしています。「監査済み」とだけ書いてある表示は、判断の材料になりません。ただ、遮断を越えるという一点では力が足りません。
無料のサービスは番号の管理や入れ替えに資源を割けないため、すでに遮断の一覧に載った番号がそのまま放置されていることが珍しくありません。
利用者は、弾かれると分かっている番号を知らずに使い続けることになります。
安全面の不安も残ります。通信の記録を集めて売っていたサービスや、アプリに不正なプログラムが混ざっていた事例が、これまでに複数報告されています。
安定して使えるか、安全に使えるか。どちらの観点でも、有料への移行を検討する価値があります。
ブロック解除への対応力でVPNを選ぶ
サービス側の遮断と、VPN側の回避。この2つは終わりのない更新の応酬です。
どこまで付いていけるかは、その会社の開発体制と運用に割ける資源で決まります。
実際に複数のVPNを使ってきた経験から、遮断への対応という観点でまとめた所感が次のとおりです。
|
VPNサービス |
ブロック解除への対応力 |
特記事項 |
|---|---|---|
|
対応サービスの幅が広く、成功率が安定している |
日本語サポートあり。国内サーバーが複数あり切り替えやすい |
|
|
多くの地域でブロック回避が可能 |
通信速度はトップクラス。速度重視のユーザーに向いている |
|
|
主要サービスへの対応は概ね問題なし |
価格と速度のバランスがよく、コスパ重視のユーザーに適している |
|
|
動画配信サービスへの対応に強みがある |
速度面ではNordVPNに劣る場面もある |
※上記は実際の使用感に基づく所感であり、定量的な検証データではありません。
複数のVPNを使い分ける体制を作る
どれだけ出来のよいサービスでも、ある日ある時、特定の相手に対してだけ通らなくなることはあります。
そのときすぐ別の手を出せるかどうかが、実際の使い勝手を決めます。
NordVPNとExpressVPNの両方を持っておけば、片方で弾かれた相手にもう片方で届く場面が増えます。
年間のプランを使えば1つあたりの費用は抑えられますし、用途で使い分けるぶん、つながらない時間そのものが短くなります。
VPN利用時に意識しておきたいこと
当サイトが7社の拠点を数えたところ、日本には7社すべてが拠点を持っていました。ただし都市を2つ以上選べるのは4社です(ExpressVPNが4都市、NordVPN・Mullvad・Private Internet Accessが2都市)。残る3社は1都市だけなので、弾かれたときに別の場所へ逃がすという手が使えません。
速度そのものも切り分けの材料になります。当サイトはNordVPNとSurfsharkの2社を14都市・のべ46回にわたって計測しています。素の回線と突き合わせられる11都市では、VPNを通したあとに残る速度は40〜90%でした。東京は780Mbpsの回線がNordVPNで444.9Mbps(57%)、Surfsharkで399.9Mbps(51%)です。動画が止まるとき、それがVPNのせいなのか回線そのものなのかは、この幅を目安に見当が付きます。
手を打つ前に、確かめておくと早いことが3つあります。
サーバーの接続国を把握しておく
日本のサービスを使いたいのに、前に別の用事で選んだ海外のサーバーにつないだままになっていないか。まずここを見てください。
アプリの接続先は、思っている以上に前回のまま残ります。別の国に切り替えたあと、戻し忘れているという例は本当によくあります。
短時間での接続国の切り替えを控える
アカウントが凍結されるのを避けたいなら、短い時間で国をまたいで行き来する操作を控えることです。
サーバーを変えるときは少し間隔を空けるか、同じ国の中の別の場所にとどめてください。前の節で都市の数を見ておいたのは、このためでもあります。
ブラウザのキャッシュとCookieを定期的に削除する
ブラウザに溜まったCookieやキャッシュが、いまの接続状態と食い違うことがあります。
サーバーを切り替えたあとは、いったんブラウザを掃除してから開き直すと、結果がはっきりします。
設定を変えた効果を正しく見るためにも、定期的に消す習慣にしておいてください。
まとめ
VPNを使っているのに開けない原因は、番号が遮断の一覧に載っている、複数の国からのアクセスと判定されている、地域制限に当たっている。この3つに集約されます。
打つ順番は決まっています。まず同じサービスの中でサーバーを切り替える。それで駄目なら有料への移行を考える。さらに、遮断への対応実績のあるVPNを複数持っておく。
そのうえで、契約する前に確かめておきたいのが自分が使う国に、いくつ場所があるかです。
当サイトの実測では、日本国内で複数の都市を選べるのは7社のうち4社でした。1か所しか無い会社では、いちばん効く対処法そのものが使えません。
遮断と回避の応酬は、これからも続きます。1つに頼りきらず、状況に応じて持ち替えられる状態にしておくことが、結局いちばん長持ちします。


